情報過多の時代に
高度情報社会である現代は、インターネットやスマートフォンなどの普及により以前より情報に触れる機会が格段に増え、情報過多とも言われています。そんな中で、必ずしも誰もが公平に情報を手に入れ活用しているとは言えません。情報に容易にアクセスできている人とそうでない人とのギャップは“情報格差”として現代社会において深刻な社会問題の一つと認識されています。
情報格差の影響とその要因
情報格差がもたらすこと
必要な情報を得られない状況は多くの機会損失を生じさせ、結果として様々な社会的不利益を被ることにつながります。
例えば、質の高い教育情報を受けられないことは学習機会を狭め、健康や医療に関する情報や行政機関からの情報を得られないことは適切な医療・福祉のほか、各種サービスを受ける機会を失うことにつながります。
また、災害などの緊急時に避難情報や支援情報などが得られなければ、適切な行動をとることができず自分の身を守ることが難しくなります。日本は地震や台風、豪雨などの災害が多く、大きな被害になることも珍しくないため、素早い判断が求められるときに情報不足は深刻な状況に陥ってしまう恐れがあります。
情報格差が生じる背景
現代社会では多くの情報がインターネットにより提供されています。情報を公平に入手することが難しい人の多くは、個人レベルでは解消が難しい課題を抱え立場的に弱い傾向があります。
- 経済的側面
経済的に余裕がない人は、情報機器やインターネット接続環境を購入・維持することが難しい場合があります。また、情報を取り扱う知識を身につける機会が限られることから、情報収集や分析に必要なスキルが十分でないことがあります。
- 年齢的側面
高齢者は情報機器の利用経験が浅く、新しい技術を学ぶことに抵抗を感じる傾向があります。そもそもデバイス自体を所有していない人も少なくありません。
- 地域的側面
都市部と地方では情報通信インフラの整備状況に差があることがあります。環境が十分でない地域では、情報へのアクセスが難しい可能性があります。
- 言語的側面
訪日外国人など、提供されている情報が母国語ではない場合、スムーズに情報入手できないばかりか、入手した情報自体を理解できないことがあります。
- 身体的/精神的側面
視覚障害や聴覚障害、または精神障害など一人ひとりが抱える問題によって情報にアクセスできるレベルに違いがあります。
情報のバリアフリー化に向けて
インターネットを通じて提供されるデジタル情報は、そのスピードと手軽さなどから多くの人にとって最大の情報源であることは疑いようもありません。
ただし、先に挙げた様々な側面により平常時でも十分な環境下にない人がいるうえ、非常時にはアクセスが制限されるリスクがあることから情報提供手法として万能ではありません。公平で持続可能な社会の実現のため情報のアクセシビリティについて情報を受け取る側の立場に立って考えていくことが重要です。
情報のアクセシビリティ向上に果たす紙媒体の役割
紙の印刷物は、その特徴と環境を問わず情報を物理的な形で提供することができることから確実な情報提供手法の一つとして有効と言えます。
印刷物の特徴
- インターネット環境がなくても利用できる
印刷物ならインターネット環境がなくても利用することができます。デバイスもスキルもいらず、親しみのある印刷物は高齢者でも、経済的・地域的に不利な境遇の人にも情報入手手法として考えられます。もちろん災害時に通信インフラがダウンしても情報を得ることができます。
- 視覚的にわかりやすい
印刷物は文字だけでなく、イラストや写真なども用いて情報を伝えることができます。そのため、誰もが視覚的に情報を理解しやすいと言えます。
- 保存性が高い
印刷物は紙に印刷されているためデジタル情報より保存性が高いことも特徴です。必要な時にいつでも手に取り情報を確認することができることは印刷物のメリットと言えます。
- 持ち運びやすい
印刷物は、本や冊子などの形態で持ち運ぶことができます。そのため、通信インフラを気にせず外出先でも気軽に情報を確認することができます。
- 信頼性が高い
印刷物は情報源が明確になっており、内容の真偽を確実に確認した状態で発行されています。そのため情報自体に信頼性があります。事実確認が不十分な情報をSNSなどで誰でも簡単に発信できる今日では、アクセシビリティに並び重要なポイントです。
災害時の活用
災害時に避難所で情報を伝える際、電子デバイスが使えない場合や電力供給が途絶えた場合には紙媒体が有用です。避難所内に掲示されたポスターやチラシを通じて、避難者に必要な情報(避難所の位置、食事提供時間、医療サービスの案内など)を伝えることができます。
また、避難所の近くに避難所の場所や連絡先を示すポスター等を設置することで、避難者が避難所を見つけやすくなるなど、インフラを必要としない情報提供手法として重宝します。
シイエム・シイの取り組み
紙媒体はデジタル情報と併用することで、より広範な人たちに適切な情報を伝えるための有効なツールとなり得ます。
シイエム・シイはビジネスとして情報を扱う立場から、長年に渡り培ってきた印刷技術にデジタル技術を加えながら、情報をわかりやすく提供するだけでなく理解を助ける取り組みも行っています。
情報の受け手のことを考え平易な言葉を用い短い文章で表現する執筆ノウハウやユニバーサルデザインなどによる視覚表現技法の活用をはじめ、外国人など日本語がわからない人へは多言語翻訳支援を、情報を取り扱う知識が乏しい人へは情報と適切に向き合えるように教材やガイドを準備し教育・研修支援を行うなど、情報格差解消に積極的に努めています。
SDGsの原則でもある「誰一人取り残さない」を情報アクセス面において実現するために、当社の取り組みは今後も続きます。