活躍の場を広げるAI

2000年代から現在にかけて世界では史上最大のAIブームが到来しています。生成AIなどの登場により、そのブームは加速していく一方です。日々、社会生活を送る中でAIという存在が大きくなっていると感じることが増えているのではないでしょうか。例えば、誰でも使えるチャットボットやスマートホームデバイスなどの日常生活を便利にしてくれるものなど身近なところにもAIは多岐にわたって活用されています。 

ビジネスにおけるAIの活用

AIに期待する役割

そのなかで企業がAIを積極的にビジネス活用しようとする動きがあります。工程の自動化、需要予測、在庫管理、商品レコメンデーション、画像による品質管理、予知保全、チャットボットによる顧客対応など、すでにAIは様々な場面で活用されていますが、ビジネスにおいてAIに期待する役割は「自動化」「最適化」「ノウハウ再現」の3つです。

「自動化」…人の業務のうち単純作業や定型業務をAIが一部あるいは完全に代替すること。
「最適化」…膨大なデータをAIが分析し、人間が予測できないパターンや傾向を見つけ出すこと。
「ノウハウ再現」…専門家の高度なノウハウをAIが学習し、試行錯誤することなく再現すること。

ビジネスにおけるメリット

これらをビジネスに活かすことで得られるメリットは様々ですが、直接的なものとして以下のことが挙げられます。

  • 業務効率化・生産性向上
    AIが高速かつ正確に処理することで、大幅な業務効率化を実現すると共に、その時間でより付加価値の高い創造的な業務に集中できるようになる
  • 意思決定の迅速化
    AIによるデータ分析や予測により、業務プロセスの改善や意思決定の迅速化を図ることができる
  • コスト削減
    人件費の削減、事務処理にかかる時間の削減、作業ミスの減少による損失の削減など、様々なコスト削減が可能になる。 

さらに、これらを推し進めることで顧客満足度の向上新商品・新サービス開発の効率化など、副次的な効果が生まれ、結果として企業の競争力強化につながります

AIの注意点

何のためのAIなのか

このようにAIへの期待感は高まる一方ですが、注意すべきこともあります。

AIをビジネスに取り入れる場合、重要なことは先に目的を明確にすることです。課題や問題に対しどのように解決したいのかという目的が明確になっていなければ適切なAI技術の選定や必要なデータの収集ができません。手っ取り早くすでに自社内にあるいくつかのデータを活用しようと考えがちですが、目的達成に合わせてデータ収集を行わなければ、本来“解決したい”課題ではなく、AIが“解決できる”課題に留まってしまう恐れがあります。

課題解決における以下のプロセスのうち、AIができるのは③における自動処理のみで、他は人間の能力です。

①ゴール設定 → ②課題定義 → ③課題解決 → ④実際の行動

あくまで、AIの活用は目的達成のための手段であり、AIの活用自体が目的になっては本末転倒です問題提起やAIが導き出した解決案を実際に実行するかどうかを判断するのは人間であるという大前提を理解し、AIと人間の役割をきちんと使い分けることが重要です

AIにできないこと

また、AIには2つの「そうぞう」ができないと言われています1つは、イマジネーションの「想像」で、もう1つはクリエーションの「創造」です

そもそもAIが得意とすることは、すでにどこかにある、もしくは学習させた膨大な情報を基に大量にデータ処理を行い、人間が決めた基準に合わせて答えを出すことです。

こんなことができたらいいのに、こういうことをしたい…と想像したり、それを実現するためにどんな技術を組み合わせてどんな人材と協力して、その人材はどうやって発掘して…というような行動を創造することは人間ならではの能力です。過去にないイノベーションをつくり出す力は未知の魅力が秘められた人間の価値と言えます

なかでも感情や情緒を表現する分野ではひらめき発想力が問われます。生成AI技術の目覚ましい進歩により、コンテンツ自体はAIで作れるかもしれませんが、独創性革新性は人間には及びません。特に、五感に響く形あるものに変え新たな価値を生み出すことは人間特有の能力なのです

AIとの共存

人間とAIはアナログとデジタルの関係性と同じ

これからは人間とAIが協力して複雑な問題を解決したり新しい価値を生み出すなど、お互いの強みを活かし補完し合う関係性を築き上げていくことが求められるようになります

この人間とAIの関係はどこかアナログとデジタルのそれにも似ている気がします。デジタル化が進展し「情報のメディア*1においていくら重宝されようと、「感情のメディア*2ではアナログの魅力・価値はなくなっていません。

同様にAIのメリットが広く認知され浸透していったとしても完全に人間に置き換わることはなく、「想像/創造」する部分では人間の価値は残ります

我々シイエム・シイは長年に渡りお客さまに寄り添いながら一緒に課題解決策を「想像/創造」してきました。そのノウハウにAIの強みを付加することで、さらなる価値を生み出すことができると考えています。

*1 情報を記録し、届け、保管する役割のメディア(ニュース、論文など)
*2 感情や情緒を表現する役割のメディア(絵本、作品集など)

AIの活用の仕方は人間次第

AIはとても便利で頼れる一方、判断や考えることを任せすぎてしまうと自分自身の判断力低下につながってしまいます。AIの提案がどのようなロジック、データに基づいているのかを理解し、真偽や妥当性を評価できる力を持っておく必要があります

AIをどのように活用するかは、人間が責任を持って判断し、決定する必要があります